14.積分の基本
★双曲線関数と微分
★逆三角関数と微分
★対数微分から積分∫f'(x)/f(x)=log|f(x)|へ
1.基本関数の不定積分
このページは電子ブック「探求 数学Ⅲ」の一部です。
積分の基本は微分です。
だから、微分の基本を逆読みすると、積分の性質が見えてきますよ。
<不定積分>
微分して(F(x)+C)'=f(x)とする。微分をもどして、∫f(x)dx=F(x)+C
微分によって、関数F(x)の定数Cはなくなる。だから、f(x)を微分の逆をして戻すと、
関数になくなる前の定数Cをつけることになる。これが積分定数C。
微分の逆にもどした関数F(x)を原始関数というね。
そして、この、形式的な微分の逆演算を不定積分という。
(F(x))'=f(x)のとき、積分をf(x)→F(x)と表してみよう。(積分定数は省略)
・トリグルール(三角関数[trigonometry]の基本)
sec x=, cosec x=, cotx=
sin2x+cos2x=1とcos(a+b)=cos(a)cos(b)-sin(a)sin(b)から、
cos2a=cos2a-sin2a=1-2sin2a=2cos2a-1
tan2x+1=(sin2x+co2x)/cos2x=1/cos2x、sin2a=(1-cos2a)/2 , cos2a=(1+cos2a)/2。
・微分と逆演算(不定積分)
(1/(n+1)xn+1)'=xnからxn→1/(n+1)xn+1
(sin x)'=cos xからcos x→sinx、(-cosx)'=sinxから、sin x→-cosx
(tanx)'=1/cos2x=sec2xから、sec2x→tanx
(cotx)'=(1/tanx)'=(cosx/sinx)'=((cosx)'sinx-cosx(sinx)')/sin2x=-1/sin2x=-cosec2x
だから、cosec2x→-cotx
・指数対数関数
(ex)'=exからex→ex、
(log|x|)'=1/xから1/x→log|x|、
(ax)'=loga axからax→
(例)
「導関数(1/2log|x-1|/|x+1|)’と、不定積分∫1/(x2-1)dx」は?
1/2(log|x-1|-log|x+1|)'=1/2(1/(x-1)-1/(x+1))=1/(x2-1)だから、
∫1/(x2-1)=1/2log|x-1|/|x+1|+C
・対数微分法
(log|f(x)|)'=1/f(x)・f'(x)だから、f'(x)/f(x)→log|f(x)|
つまり、∫f'(x)/f(x) dx =log|f(x)|+C
(例)
「導関数(log|x+√(x2+a)|)’と、不定積分∫1/√(x2+a) dx」は?
1/(x+√(x2+a)) ・(x+√(x2+a))'=(1+2x/2√(x2+a))/(x+√(x2+a))
=1/√(x2+a)・(x+√(x2+a))/(x+√(x2+a))=1/√(x2+a)だから、
∫1/√(x2+a) dx=log|x+√(x2+a)|+C
(例)
「不定積分 ∫ tanxdx」は?
tanx=sinx/cosx=(-cosx)'/cosx=-(cosx)'/cosxこれで、f(x)=cosxとおける。
∫tanx dx =-∫(cosx)'/cosx dx=-log|cosx|+C
(例)
「不定積分 ∫ cotxdx」は?
cotx=cosx/sinx=(sinx)'/sinxこれで、f(x)=sinxとおける。
∫cotx dx =∫(sinx)'/sinx dx=log|sinx|+C
2.基本ではないが標準的な関数の不定積分
・双曲線[hyperbolic, hyper]関数
sinh x=1/2(ex-e-x)。cosh x=1/2(ex+e-x)
ちなみに、geogebraにはsinh(x)もcosh(x)など、多数の双曲線関数がすでに定義されている。
だから、定義せずにそのまま使えるね。念のために、定義を確認しておこう。
tanh x=sinh x/ cosh x= (ex-e-x)/(ex+e-x)、coth x=1/tanh x =(ex+e-x)/(ex-e-x)
sech x=1/cosh x。cosech x=1/sinh x。
・加法定理の証明もカンタンなので略。(sinh x も、cosh x も指数関数の和か差÷2だから)
sinh(a+b)=sinh a cosh b + cosh a sinh b。cosh(a+b)=cosh a cosh b + sinh a sinh b。
b=-bとすると差の加法定理ができる。sinh( -b)=-sinh(b),cosh(-b)=cosh(b)から、
差の加法定理は差に変わるね。
さらに、b=aを代入すると、cosh(a-a)=cosh2a- sinh2a=cosh(0)=2/2e0=1。
・微分
(sinh x)'=(1/2(ex-e-x))'=1/2((ex)'-(e-x)')=1/2((ex)+(e-x))=cosh x。同様にして。(cosh x)'=sinh x。
(tanh x)'=((sinh x)'cosh x-sinhx(cosh x)')/cosh2x=(cosh2x-sinh2x)/cosh2x=1/cosh2x=sech2x
(coth x)'=-cosech2x (注意 cosech(x)をcsch(x)と省略することが多いようだ。)
・積分
sinh x→cosh x。cosh x→sinh x。sech2x→tanhx。cosech2x→-coth x
・逆三角関数
x=sinyはyをーπ/2以上+π/2にすると、xはー1以上+1以下になる。
このとき逆関数y=sin-1xをy=arcsinxともかく。xの定義域−1以上1以下でyの値域-π/2以上π/2以下。
同様にして、y=cos-1xのことをy=arccosxともかく、y=tan-1xをy=arctanxともかく。
・微分
siny=x,y=sin-1x。(sin-1x)'=dy/dx=1/(dx/dy)=1/d(siny)/dy=1/cosy=1/√(1-sin2y)=1/√(1-x2)
cosy=x,y=cos-1x。(cos-1x)'=dy/dx=1/(dx/dy)=1/d(cosy)/dy=-1/siny=1/√(1-cos2y)=-1/√(1-x2)
tany=x,y=tan-1x。(tan-1x)'=dy/dx=1/(dx/dy)=1/d(tany)/dy=1/1/cos2y=1/sec2y=1/(1+tan2y)=1/(1+x2)
coty=x,y=cot-1x。(cot-1x)'=dy/dx=1/(dx/dy)=1/d(coty)/dy=1/(-1/sin2y)=-sin2y=cos2y-1
=1/(1+tan2y)-1=(1-1-tan2y)/(1+tan2y)=-tan2y/(1+tan2y)=-1/(1/tan2y+1)=-1/(cot2y+1)=-1/(x2+1)
・積分
∫1/√(1-x2)dx= sin-1x+C。
∫1/(1+x2)dx= tan-1x+C
3.定積分
<定積分>
関数f(x)の定義域の閉区間[a,b]を適当にn個の区間に細分a=a0, a1,...,ai,...an=bして、
その細分された幅hiとf(ai)の積の和In=∑f(ai)hiを近似和という。
この和をn→∞にしたときhi→dxとなり、 Inの極限値Iを定積分という。
この細分は区間の等分とはかぎらず一定値に収束するとき、Iを[a,b]で積分可能という。
・定積分は線形の操作である。(和・差・定数倍は積分記号の外に出せる。)
・定積分はf(x)が区間[a,b]で0以上ならば、その区間での関数とx軸がはさむ面積を意味する。
・区間[a,a]の定積分は0である。
・定積分も微分係数と同様に中間値の定理、平均値の定理が成り立つ。
・定積分と不定積分のつながり
ここで、bを動かした関数
を定義するとき、この微分はとなる。
つまり、S(x)はf(x)の原始関数の1つだ。だらか、F(x)=S(x)+Cとおける。
すると、F(b)-F(a)=S(b)-S(a)=
この等式の最初と最後から、 (不定積分の基本)
また、対数微分法からの積分公式∫f'(x)/f(x)=log|f(x)|+Cも使おう。
有理関数の積分では、部分分数に分解することも考えてみよう。
(例)
「対数微分法から∫1/√(x2+a) dx=log|x+√(x2+a)|+C。これから定積分の値」は?
。
(例)
「対数微分法から ∫tanx dx=-∫(cosx)'/cosx dx=-log|cosx|+C。これから、の値」は?
-[log|cosx|]π/30=-(log(1/2)-log1)=log2。
(例)
「対数微分法から ∫2x/(x2+1)dx=∫(x2+1)'/(x2+1) dx=log|x2+1|+C。これから、の値」は?
1/2[log|x2+1|]10=1/2(log2-log1)=1/2log2。
(例)
「部分分数分解で 1/(x2+x)=1/x(x+1)=1/x-1/x+1。これから、の値」は?