絶対無理ゲー
5次方程式

1.アーベル・ルフィニの定理
このワークシートはMath by Codeの一部です。
・5次以上の一般代数方程式の代数的な解の公式を探すことは無理な話しです。
・古代から作図不可能な問題があります。
今回は、これらの絶対無理な課題、絶対無理ゲーについてさぐっていきましょう。
<クンマー理論>
べき拡大のガロア群は巡回群だった。ガロア群が巡回群になる拡大を巡回拡大というのでべき根拡大は巡回拡大といえるね。その逆も言える。巡回拡大になるガロア拡大はべき根拡大だ。
つまり、E=F(a), an∈Fとなるaがある。
ガロア理論と、このクンマー理論を使うことで、
一般代数方程式が代数的に解けるための条件が明確になる。
<代数的可解性>
F上の代数方程式が代数的に可解であることは、代数的解法(Fに四則演算とべき根を有限回を行って、解が表現できる)があるということだ。
・体で見ると、体Fから拡大を繰り返した先に最小分解体Eに到達する。毎回の拡大はべき根拡大だ。
・群で見ると、Fが1の原始n!乗根を含み、Eが最小分解体とするときのガロア群Gal(E/F)の正規分群の列が{1}に到達するまである。毎回の商群は巡回群だ。
この条件にあうガロア群を可解群という。
・可解群の商群が「巡回群」である条件の言い換えもできる。「アーベル群」としても、巡回群の直積分解の定理から同じになる。また、「素数位数の群」としても、いずれ巡回群になる。
数値ではなく、文字を使った一般代数方程式について、次の定理が成り立つことは有名だ。
これは、5次以上の数値代数方程式が数値的に解けないという意味ではない。
一般代数方程式の一般公式が作れないということだ。つまり、解の公式は4次方程式までということだね。
数値解なら近似法はさまざま在りうるし、特定の条件をつければ、公式が作れる方程式群もありうるでしょう。
<アーベル・ルフィ二の定理>
5次以上の一般代数方程式は、代数的解法を持たない。
体F上のn次既約代数方程式で、F上のガロア群GがSnに同型なものがあるので、「5次以上のSnが可解群でないこと」で証明できる。
Snの正規部分群は交代群Anだ。しかし、5次以上の交代群Anは単純群だから可解群でない。はい終了。
Sn/Anの商群は位数2になり、中間体の拡大次数は2になる。ここまではよい。
しかし、Anは単純群だ。だから、正規部分群はそれ自身か{1}なので、ここで分解が止まる。
最小分解体まで拡大するための添付するべき根も決定できないから代数的に解けないということだね。
これが概略。
くわしく、意味を確認しよう。
2.5次以上の交代群は単純群
3次の巡回置換に着目しよう。
<単純群>
単純群の定義は単純だ。群Gが素数みたいに、eとG以外の正規部分群をもたない群だ。
たとえば、5次交代群A5は単純群だ。位数は5!/2=60。
互換の積になる巡回置換の積に分解できる共役類の型とそれに対応する要素の数は、
5=3+1+1=2+2+1=2+1+1+1=1+1+1+1+1
(abcde), (abc)(d)(e), (ab)(cd)(e),(ab)(c)(d)(e),e
(5-1)!=24, 5C2*2=20, 5C2/2=5,5C2=10,1
60=24+20+5+10+1が類等式。
・正規部分群の位数は1以外の類24,20,5,10のいくつかの合計に1をたしたものだね。
・正規部分群の位数は、もとの群は割り切れるので60の約数になる。
これを両立できるものは1か60しかないから、それ以外の正規部分群はありえないね。
<5次以上の交代群Anは単純群>
・交代群の置換は要素を1つ増やした交代群の置換に単射で移せる。
5次以上の交代群は3次の巡回置換で生成される。
(理由)
・3次の巡回置換は1要素共通の2つの互換の積で表せる。たとえば、(a b c)=(a b)(a c)
・要素が共通しない2つの互換の積は3次の巡回置換の積に直せる。(ab)(cd)=(abc)(bcd)
だから、互換を2つ増やすために3次の巡回置換2つを増やせばよい。
・以上から、互換の偶数個の積は3次の巡回置換の積だけで実現できる。
これらの事実を組み合わせて、帰納的に解決できるでしょう。
3.作図不可能問題
説明が難しいが作図ができない問題が古来からあった。
たとえば、角の3等分と立方体倍積問題だ。
一方、ガロア理論によると、n次方程式が代数的に解けるのは、ガロア群が可解のときだったね。
作図は円と直線の交点か、円と円の交点で新しく点と長さを決めることだから、2次方程式に還元できる。
ということは、
正多角形が作図できるためには、商群の位数が2となり、体が2次拡大の連続になる
ということだ。
<角の3等分>
y=cosθが作図できている角のとき、
角θを3等分する作図が定規とコンパスだけでできるか。
x=cos(θ/3)とすると、3倍角公式cos3A=4cos3A- 3cosA
から、4x3-3x=cosθ。
・θ=π/3のとき、y=cos(π/3)=1/2
f(x)=4x3-3x-1/2はQ上既約。
根の1つをαとする。f(x)の最小分解体をFとすると、
拡大体FはQの2次拡大の連続になるから、拡大次数は2のべき乗になるが、最小多項式の次数が3なので
ありえないね。
・θ=π/2のとき、y=cos(π/2)=0
4x3-3x=x((2x)2-3) (x≠0)から、 最小多項式はf(x)=(2x)2-3。
根の1つをαとする。最小分解体Fの拡大次数は2も最小多項式の次数も2なので作図できる。x=√3/2
<立方体倍積>
一辺の長さ1の立方体の体積を2倍した立方体を作図することはできるか。
長さが21/3なので、21/3の作図が可能であるかどうかの問題。21/3の最小多項式はf(x)=x3-2で、Q上既約だから、拡大次数は3になるが、2のべき乗の拡大次数でないと作図できない。