素早く獲物に近づく連分数
このページはマス旅の一部です。
無理数や円周率というと、近似が話題になりますね。
ラマヌジャンの連分数は猛スピードでターゲットに近づくことで有名です。
それをみていこう。
1.ラマヌジャン以前
ラマヌジャン以前
「無理数に見えるのに整数になる?」でもやったように、
√2の近似は、連分数で求められますね。
1+1/(2+1/(2+1/(2+1/......)))=√2
texで書くと、
√2
でした。
近似分数は連分数だけではなく、行列・微分とも関係が深いです。
連分数は打ち切ると普通の分数になるので、近似分数列ができます。
√2に限らず、近似分数は作れますね。たとえば、黄金比。
たとえば、黄金比を求める近似分数は、フィボナッチ数列と関係があることがわかってます。
ユークリッドの互除法をしたときに、商が1になり続ける2辺の長方形の辺の比が黄金比だからです。
連分数はユークリッドの互除法の割り算を分数に直しているだけだから、
1+1/(1+1/(1+1/(1+1/......)))=φ
texで書くと、
= φ=(1+√5)/2
途中で打ち切ると1,2,3/2,5/3,8/5, 13/8, ................とフィボナッチ数列の比ができますね。
<無理数の行列近似>
話しを√2の戻そう。
近似は分数ではなく行列でもできます。
無理数の近似は数論における伝統的な「ペルの方程式」と関係があります。
くわしくはこちら。https://www.geogebra.org/m/twxxx3yq#material/aj585ahk
ぺルの方程式x^2-2y^2=1の解はたくさんあるでしょうが、
整数解は(3,2),(1,0)がすぐみつかりますね。
移項して、x^2=2y^2+1。両辺をy2乗で割って、(x/y)^2=2+1/y^2。
yが大きくなるほど(x/y)^2≒2なので、x/yが√2の近似値になりますね。
そこで、(x1,y1)=(3,2)として、
(x1+√2y1)^n=xn+√2ynとおけば、
(x+√2x)(x-√2y)=1だから、(xn+√2xn)(xn-√2yn)=1が保たれるので、解を次々と製造できますね。
x_n+√2y_n=(x1+√2y1)(x_n-1+√2y_n-1)=(3+2√2)(x_n-1+√2y_n-1)
=(3x_n-1+4y_n-1)+√2(2x_n-1+3y_n-1)から、
製造マシンとなる行列P={{3,4},{2,3}}ができる。
列ベクトル(1,0)を初期値として、解[x,y]と比x/yをプログラミングして求めると次のようになります。
[3, 2], [17, 12], [99, 70], [577, 408], [3363, 2378], [19601, 13860], [114243, 80782], [665857, 470832], [3880899, 2744210], [22619537, 15994428]
1.5
1.4166666666666667
1.4142857142857144
1.4142156862745099
1.4142136248948696
1.4142135642135643
1.4142135624272734
1.4142135623746899
1.414213562373142
1.4142135623730965
<近似といえばニュートン法>
近似といえばニュートン法が有名です。
微分を使うのですが、微分を1回やれば、あとは漸化式ができあがるので、わりと扱いやすいです。
有名すぎる方法ですが、念のために確認しておこう。
√2の値を求めたいときに、y=f(x)=x^2-2のグラフとx軸との交点xが求める真の値となります。
仮にグラフ上の点A(x1,f(x1))でひいた接線のx軸との交点をB(x2,0)としましょう。
直線ABの傾きは、f'(x1)=Δy/Δx=(f(x1) - 0) /(x1-x2)となります。
x1-x2=f(x1)/f'(x1) だから、x2=x1-f(x1)/f'(x1)となりますね。
f'(x)=2xだから、x-f(x)/f'(x)=x-(x^2-2)/(2x)=x-(x/2-1/x)=x/2+1/xと簡単な式になりますね。
xn=aとするとxn+1=a/2+1/aと漸化式ができすね。
x1=1とすると、x2=0.5+1/1=1.5
x3=1.5/2+1/1.5=1.4166
x4=1.4166/2+1/1.4166=1.4142
x5=1.4142/2+1/1.4142=1.414213562...
近似と言えばニュートン
ではなく、「近似と言えばラマヌジャン」だったのです。
それをこれから見ていこう。
2.ラマヌジャンの連分数
ラマヌジャンは漸化式の発想ではなく、一斉に変えることが得意でしたね。
ラマヌジャンで有名な連分数の式は黄金比の連分数と似ています。
フィボナッチ数列の比の極限がφ=(1+√5)/2になるのでした。
さて、さっきの分数の逆数を考えるとどうなるでしょうか。
1,2,3/2,5/3,8/5, 13/8, ................の逆数数列は1/1,1/2,2/3,3/5,5/8, 8/13, ................となりますね。
φ=(1+√5)/2の逆数は1/φ=2/(1+√5)=2(√5-1)/(5-1)=(√5-1)/2=(√5+1)/2-1=φ-1です。
1/(1+1/(1+1/(1+1/......)))=1/φ=φ-1ですね。
texで書くと、
=1/φ=φ-1
似ていますが、これを変化可能なものに改造します。分子部分をqの関数にするのです。
R(q)=q^(1/5)/(1+q/(1+q^2/(1+q^3/......)))とおきます。
ここで、q=1にすると、R(q)の近似分数は1/φ=φ-1に近づくはずですよね。
何と、ラマヌジャンはqに1を入れないでq = e^{-2π}≒0.001867を代入するのです。
ラマヌジャンはR(q)の近似分数の真値は√{(5+√5)/2}-φ=0.28407904384041229..
としました。
ある理屈をつけてラマヌジャンはターゲットをφそのものではなくしました。
でも、近似分数の精度は測れますよね。
課題:R(q)でq = e^{-2\π}を入れた近似分数を少し計算してみよう。
設定ボタンを1つのビューで選び、さらに全体の設定ボタンを選び、表示桁数を最大
小数点以下15桁にします。
qv=e^(-2pi)
q={qv^{1/5}, qv, qv^2, qv^3, qv^4}
goal=0.284079043840412(小数第15位のゴールを設定します。)
r(x,k)=x/(1+k)
R1=q(1) -goal
R2=r(q(1),q(2)) -goal
R3=r(q(1),r(q(2),q(3))) -goal
R4=r(q(1),r(q(2),r(q(3),q(4))))- goal
結果を見てください。R1,R2はまだ誤差があります。
でも、R2,R3では小数第15位まででは、
誤差ゼロです。
常識を超えた近似のスピードです。
<振り返り>
このゴール値自体が、ラマヌジャンが計算したものだから、狙いどうりの的中が起きるのも
当然かもしれませんが、あまりにも早すぎますね。
ラマヌジャンは自分の考えた構造化の結果として、5次方程式を作り、
その解がgoalだったようです。
普通の数学者は、すでにそこにある値(例えば√2 や π)」に向かって、
どうやって近似のハシゴを伸ばすかを考えます(単線的な思考)。
しかしラマヌジャンは違いました。
彼は、5次の対称性を持つ連分数R(q)という巨大な構造のネットワークそのものを先に脳内に生み出し、
「この構造が最も美しく調和し、かつ劇的な5次方程式を吐き出すパラメータ qは何か?」
を逆算したのです。
その結果が、あのq = e^{-2pi} という、一見すると不気味で奇妙な値でした。
数値だけをみるのではなく、
数値のふるさとである正五角形に関係づけてゴールすら変更できるものにした上で、
きれいにゴールを決める
という美技です。
証明ありきではなく、
数値を単線的に追いかけるのではなく、
一斉に関係づけながら構造を数式化していく
という
ラマヌジャンにしかできない数学アートでした。
今でも、世界中の超優秀な数学者たちは、神の子ラマヌジャンのかいたことの「証明」に
膨大な時間をかけているようです。
その結果として、新しい発見や新しい数学の理論が生まれたりという、恩恵があるようです。
フェルマーの大定理の証明
だけではありません。
楕円関数、
モジュール形式、
ブラックホールのエントロピー計算、
。。。。