原点は台風の目だった?
このワークシートはMath by Codeの一部です。
前回は球面にあるつぶ波の関数、球面調和関数にたどり着いたね。
今回は、いよいよ動径rの波動関数を求めることで、球全体にどんなつぶ波ができるかをさぐろう。
1.動径rの波動関数
前回は球対称のポテンシャルの場でのつぶ波をさぐるために、
パラメータで方程式を分解したね。
そして、動径rと北極からの南緯θと東経φに分けておき、
ψ(r,θ,φ)=R(r)Y(θ,φ)と分解した。
先に角度関係の関数Y(θ、φ)、いわゆる平面調和関数を決定したね。
波の状態は、l(方位量子数)が多いほど、模様が細かくなり、節が増える。
M(磁気量子数)の数だけ経線、つまりたての節ができて、残りが横(緯線)の節になるのだったね。
角運動量の大きさは固有値としてhbarの√l(l+1)倍なので、正の整数の最大値はlなので、l通りあり、
これに0と負のl通りを合わせると、2l+1通りに量子化されるね。これを角運動量の量子化という。
Y(θ、φ)のイメージは、Y=s(θ)f(φ)と、パラメータで分離したもの積ですが、くわしくは、
Mが整数、lが非負の整数、m=abs(M)<=lのとき、
・f(φ)=Aexp(iMφ) A=1/sqrt(2π)Mは整数
・P^M_l(z)は、ルジャンドル関数(1-z^2)^(m/2) * d^m/dz^m (P_l(z))で、
ルジャンドル多項式P_l(z)=1/2^l *l! (z^2-1)^(l) l階微分したものでした。
これらを連結することで、
調整係数をε=if(M>0, (-1)^M, 1)とするとき、球面調和関数は、
Y^M_l(θ,φ)=N^M_l s(θ)f(φ)
=ε sqrt[(2l+1)/4π * (l-m)!/(l+m)!] P^M_l(cosθ) exp(iMφ)
でした。
球面のつぶ波Yは角運動量Lの2乗とLzがきまった値をもつとき安定していたね。
定常状態だ。Yはそれらの固有関数、固有な状態だった。
<動径の方程式>
さて、動径の方程式はR(r)を見やすくRとだけかくと、
1/r ∂2/∂r2(rR)+{{E-V(r)} ーλ/r2}R=0
でした。
球面が発散せずに安定しているためには、λ=l(l+1) lが非負の整数という条件がついていましたね。
だから、
1/r d2/dr2(rR)+[{EーV(r)} ーl(l+1)/r2]R=0
ここで、u(r)=rRとおきかえ,r倍して、の逆数をかけ、中カッコ、大かっこをはずします。
d2/dr2(u(r)) + Eu(r)ーV(r)u(r)ー l(l+1)/r2}u(r)=0
これを、意味的にu(r)でくくりましょう。
^H=- ∂2/∂x2+V(x) という、いつもの形です。
Au+Bu=Eu、Aが運動系、Bがポテンシャル系という1次元のシュレーディンガー方程式の形にできます。
[-d2/dr2]u(r) +[V(r)+l(l+1)/r2 ]u(r)=Eu(r)
B部分は、ポテンシャルエネルギー部分ですね。球面のポテンシャルV+遠心力ポテンシャル。
・球面ポテンシャルVは球対称ポテンシャルエネルギーの底です。
・遠心力ポテンシャルは、lとrの式は角運動量Lを半径2乗で割ってます。
lが大きいほど、中心に近いほど大きくなります。
だから、これは、中心から蹴散らす力ですね。遠心力と同じエネルギーです。
Vsum(r)=V(r)+l(l+1)/r2
l>0でrがほぼゼロだと、遠心力は膨大になるので、V=Eとして消せるくらいだから、
[-d2/dr2]u(r) +[l(l+1)/r2 ]u(r)≒0、ここから、u(r)≒r^(l+1)の場合があり得る。
だから、u(0)=0になる。
l=0でも、同様にして、u(0)=0となる。
カンタンにいうと、R=u(r)/rが発散しないためには、0/0になることです。
だから、r=0のときはu(0)=0になるという説明でもいいね。
つまり、中心では無限大の波がうねっているのではなく、正反対に「台風の目」のように
静まり返っているということだね。
2.動径方向の量子化
動径の方程式は1次元のシュレーディンガー方程式の形をしていることがわかった。
しかし、ポテンシャル部分に球面ポテンシャルの他に遠心力ポテンシャルがあることがわかった。
E,l,Mが決まると、つぶ波は完全に決まる。特に大事なのは方向量子量lだ。
エネルギースペクトルを考えると、
lが決まるとMは‐lからlまでの整数の2l+1通り可能になる。
しかも、それがエネルギーEに縮重するからだ。
遠心力ポテンシャルが効いていても境界条件u(0)=0。
十分ポテンシャルエネルギーV(r)が効いていてつぶ波を束縛しているとする。
[-d2/dr2]u(r) +[V(r)+l(l+1)/r2 ]u(r)=Eu(r)
lを0,1,2、…のどれかに決めたしよう。
そのときの、解であるuln(r)の固有値エネルギーを小さい順に並べて、E_0l,E_1l,......E_nlとする。
つぶ波uln(r)それぞれについて、R_nl(r)=1/r uln(r)が解を持ちそれが、E_nlと同じになる。
だから、結局はlに応じた2l+1個の独立な3次元のつぶ波ψ_nlm(r)=R_nl(r)*Y^M_l(θ,φ)が
最初の球対称ポテンシャル場でシュレーディンガー方程式の解になるね。
波の節は球面にはl個あり、動径方向にはn個になる。
nは動径部分の節の数にあたるので、動径量子数という。
角運動量lに応じて、状態に名前がある。
l=0,1,2,3、4, 5 ,.... の順にs、p、d、f、g, h
3.Vでわけて考えよう
<V=0の場合>
中心ポテンシャルV(r)がrが[0,無限大]の区間で定数0になるところがあり、V=0とする。
動径方程式はベッセル関数の線形結合になる。
k=sqrt(2mE/hbar)
ρ=k r とおくと、
[-d2/dr2]u(r) +[V(r)+l(l+1)/r2 ]u(r)=Eu(r)の式は、
[d2/dρ2 +(1- l(l+1)/ρ2 )]u(r)=0となり、f=u(r)/r とおくと、fは球ベッセル関数の解となる。
[d2/dρ2 +(2/ρ*d/dρ- l(l+1)/ρ2 )]f=0となる。
この方程式の一般解は、独立な2つ解の線形結合となる。
ρ=0で正則な解は半整数次のベッセル関数で、j_l(ρ)とかく。一般式は略。
ρ=0で正則でない解をノイマン関数で、n_l(ρ)とかく。一般式は略。
特に、
j_0(x)=sinx/x,
j_1(x)=sinx/x^2-cosx/x ,
j_2(x)=(3/x^3-1/x)sinx-(3/x^2)cosx
n_0=-cosx/x,
n_1=-cosx/x^2-sinx/x,
n_2=-(3/x^3-1/x)cosx-(3/x^2)sinx
これらの線形結合であるハンケル関数の挙動をρ<<lという
原点付近で調べると、ノイマン関数が発散し、ベッセル関数は発散しない。
原点付近は台風の目となり、発散してはいけないので、ベッセル関数を採用しよう。
R_l(r)=j_l(kr)と分かる。
j_0,j_1,j_2を比べると、j_lは節が増えると波はおとなしく遠くに及ぶことがわかるね。
これが、動径方向の波の特徴となるね。
<V=-V0<0の場合>
粒子が半径aに束縛されるとき
V(r)=if(r<a,-V0<0、0)とできる。
E<0として、
α=sqrt(2m(|V0|-|E|)/hbar)、ρ=αrとおくことで、
ρについて、上記と同様な議論ができる。
その結果、
ポテンシャルのある内部では、
R_l(r)=Aj_l(αr)と分かる。
ポテンシャルが低いので、遠心力におさえられながらも、わりと激しく動けるね。
しかし、半径aの束縛をこえると、不可能領域ではないためトンネル効果のように
波ではなく振動せずに減るカープのつぶ波の挙動になる。
<3次元のつぶ波>
これで、3次元のつぶ波の式ができました。
ψ(r,θ,φ)=R(r)Y(θ,φ)=J_l(kr)Y^M_l(θ,φ)です。
・動径による波のようすのちがいは次のようになるね。
中心: 台風の目の静けさ。
球の中 (r < a): 激しくうねる球ベッセル関数
球面(r = a): 内部の波と表面の波がつながる。
球の外部 (r > a): 緩やかに指数関数的に減衰する、波の残り香。
・lによる波のようすのちがいは次のようになるね。 lが0だと、同心球のように玉ねぎ状に腹と腹の間に球面の節がある3次元のつぶ波。 lが1以上だと、球面にl個の節があり、2l+1通りのMの値が同じエネルギーに重合するスペクトルになる。 以上のことが3次元の物質のミクロ構造の基盤になるね。
水素元素をはじめとして、ポテンシャル場を設定することで、 元素による電子のエネルギースペクトルやつぶ波のようすがイメージしやすくなる。 また、多粒子や分子についてもこれを土台にして、さらに相互関係の法則を加えることで、 化学的な結合や電磁的な力についても推測できるようになるでしょう。