15.部分積分
何を微分用にする?
1.積の微分を積分へ
このページは電子ブック「探求 数学Ⅲ」の一部です。
<積の微分から部分積分へ>
小文字が導関数。逆微分をインテグラルの頭文字アイでかくとl(f)=F,l(g)=G。
微分公式(FG)'=fG+Fgを変形する。Fg=(FG)'-fG
両方の辺を積分して、∫(Fg)=FG-∫(fG)を部分積分[Integrating by parts ]公式という。
次の3ステップでやってみよう。(積分定数Cは省略)
(式の見方)FとGはもともと対等な式なので、Fが微分用で、多項式になるものがよい。
(手順1) gを積分してFGとかく。
(手順2) それから、そのF部分だけ微分したfGの積分をひく。
fを積分、Gを微分すると∫fG=FG- ∫Fg
Fを微分、gを積分すると∫Fg=FG-∫fG。
2.代数と非代数の積
<logxがあれば、これを微分用に>
logxを微分して1/xとすると、積が代数式なら、積分関数もカンタンになりやすい。
(例)「不定積分∫ logx dx」は?
(F,g)=(logx , 1)⇒ (f,G)=(1/x,x)⇒ fG=1は積分がカンタン。
FG-∫(fG)dx=(logx)(x)-∫1dx=x logx- x+C
(例)
「不定積分∫ x logx dx」は?
(F,g)=(logx , x)⇒ (f,G)=(1/x,1/2x2)⇒ fG=1/2xは積分がカンタン。
FG-∫(fG)dx=(log)(1/2x2)-∫(1/2x)dx=logx/2・x2-1/4x2+C
(例)
「不定積分∫ √x logx dx」は?
(F,g)=(logx,x1/2)⇒ (f,G)=(1/x,3/2x3/2)⇒ fG=3/2x1/2は積分がカンタン。
FG-∫(fG)dx=(logx)(3/2x3/2)-∫(3/2x1/2)dx=logx・3/2x3/2-3/2・3/2x3/2+C=3/2√x3 (lnx-3/2)+C
(例)
「不定積分∫((4x+1)logx)dx]は?
(F,g)=(logx,4x+1)⇒ (f,G)=(1/x,2x2+x)⇒ fG=2x+1は積分がカンタン。
∫(Fg)=(lnx)(2x2+x)-∫(2x+1)dx=(logx)(2x2+x)-x2-x+C
<logxがないなら、代数式を微分用に>
積分したあとにさらに積が残れば、部分積分を追加実行してみよう。
(例)
「不定積分∫ x sinx dx」は?
(F,g)=(x,sinx)⇒ (f,G)=(1,-cosx)⇒ fG=-cosxは積分がカンタン。
FG-∫(fG)dx=x(-cosx)-∫(-cosx)dx=-x cosx+sinx+C
(例)
「不定積分∫ x cosx dx」は?
(F,g)=(x,cosx)⇒ (f,G)=(1,sinx)⇒ fG=sinxは積分がカンタン。
FG-∫(fG)dx=x(sinx)-∫(sinx)dx=xsinx+cosx+C
(例)
「不定積分∫((x)ex)dx」は?
(F,g)=(x,ex)⇒ (f,G)=(1,ex)⇒ fG=exは積分がカンタン。
FG-∫(fG)=(x)(ex)-∫(1・ex)=xex-ex+C
(例)
「不定積分∫((x2)ex)dx」は?
(F,g)=(x2,ex)⇒ (f,G)=(2x,ex)⇒ fG・1/2=x・exは、積分が上の例で実行済み。
FG-∫(fG)=(x2)(ex)-∫(2x・ex)=x2ex-2(xex-ex+C)=ex2((xex-ex+C)
(例)
「不定積分∫ x2 sinx dx」は?
(F,g)=(x2,sinx)⇒ (f,G)=(x,-cosx)⇒ fG・(-1/2)=x cosxは、積分が上の例で実行済み。
∫(Fg)dx=FG-∫(fG)dx=x2(-cosx)-∫2x(-cosx)dx=x2(-cosx)+2∫xcosxdx=-x2(cosx)+2(xsinx+cosx)+D
=2xsinx+(2-x2)cosx+D
ペアをダブルで部分積分
3.非代数どうしの積
<指数関数×三角関数は、部分積分を2回してからまとめる>
exが微分用で、三角関数が積分用。
(例)
「不定積分 ∫ ex sinx dx」は?
変数は置換しないので、
ここでは、積分変数を略して I(関数)=原始関数のようにかくことにする。
P=I(exsinx)、Q=I(excosx)とペアになるものをおく。
F=f=exを使う。
I(sinx)=-cosx、l(cosx)=sinxこれが積分したあとの関数Gとなる。
P=l(exsinx)=ex(-cosx)-I(ex(-cosx))=-excosx+Q
Q=l(excosx)=ex(sinx)-I(ex(sinx))=exsinx-P
まとめるとP=-excosx+(exsinx-P)=ex(sinx-cosx)-P
だから、不定積分P=ex(sinx-cosx)/2
(例)
「不定積分 ∫ e-x sinx dx」は?
P=I(e-xsinx)、Q=I(e-xcosx)とペアになるものをおく。
微分用F=e-x,微分後f=-e-xを使う。
I(sinx)=-cosx、l(cosx)=sinxこれが積分したあとの関数Gとなる。
P=l(e-xsinx)=e-x(-cosx)-I(-e-x(-cosx))=-e-xcosx -Q
Q=l(e-xcosx)=e-x(sinx)-I(-e-x(sinx))=e-xsinx+P
まとめるとP=-e-xcosx-(e-xsinx+P)=-e-x(sinx+cosx)-P
だから、不定積分P=-e-x(sinx+cosx)/2
(一般化しよう)
「不定積分 P=∫ eax sinbx dx, Q=∫ eax cosbx dx」は?
微分用F=eax,微分後f=aeaxを使う。
置換積分によって、
I(sinbx)=-1/bcosbx、l(cosbx)=1/bsinbx これが積分したあとの関数Gとなる。
P=l(eaxsinbx)=eax(-1/bcosbx)-I(aeax(-1/bcosbx))=-1/b・eaxcosbx +a/b・Q
Q=l(eaxcosbx)=eax(1/bsinbx)-I(aeax(1/bsinbx))=1/b・eaxsinbx - a/b・P
まとめると
P=-1/b・eaxcosbx+a/b(1/b・eaxsinbx-a/b・P)=1/b2・eax(asinbx-bcosbx)-a2/b2P
だから、不定積分P=eax(a sinbx- b cosbx)/(a2+b2)+C
Q=-1/b・eaxsinbx- a/b(-1/b・eaxcosbx+a/b・Q)=1/b2・eax(asinbx+bcosbx)-a2/b2Q
だから、不定積分Q=eax(a sinbx+b cosbx)/(a2+b2)+C
4.サインのn乗の積分関数の漸化式
sinnx,cosnxの不定積分はどうなるだろうか?
とりあえず
In=Integral(sinnx, x)(nが非負の整数)という関数列を考えてみよう。
そのために、
I(n)=∫sinnx dx
IC(n)=∫ sinnxcosx dx
ICC(n)=∫cosx・sinnxcosx dx
とおき、その関係をさぐってみよう。
<実験>
・I(2)=∫sin2x dx = ∫sin2x dx=1/2 ∫ (1-cos2x)dx=1/2(x-1/2sin2x)
・I(4)=∫sin4x dx = ∫sin2x sin2x dx= ∫sin2x(1- cos2x)dx= ∫sin2x dx- ∫cosx・ sin2xcosx dx
=I(2)- ICC(2)
置換積分しよう。sinx=tとおくと、dt/dx dx= cosx dx = dtだから、
IC(2)=∫ sin2xcosx dx= ∫t2 dt=1/3 t3=1/3 sin3x+C
部分積分しよう。(F,g)=(cosx, IC(2) )とおくと、(f,G)=(-sinx, 1/3 sin3x)だから、
ICC(2)=∫ Fg dx= FG- ∫fG=cosx・1/3 sin3x- ∫-sinx・1/3 sin3x dx =1/3 cosx・sin3x+1/3 ∫sin4x dx
=1/3 cosx・sin3x+1/3I(4)
まとめてみる。I(4)=I(2)-1/3 cosx・sin3x-1/3I(4)だから、 I(4)(1+1/3)=I(2)-1/3 cosx・sin3x
I(4)=1/4(3・I(2)- cosx・sin3x)
・I(6)=∫sin6x dx = ∫sin4x sin2x dx= ∫sin4x(1- cos2x)dx= ∫sin4x dx - ∫cosx・ sin4xcosx dx
=I(4)- ICC(4)
置換積分しよう。sinx=tとおくと、dt/dx dx= cosx dx = dtだから、
IC(4)=∫ sin4xcosx dx= ∫t4 dt=1/5 t5=1/5 sin5x+C
部分積分しよう。(F,g)=(cosx, IC(4) )とおくと、(f,G)=(-sinx, 1/5 sin5x)だから、
ICC(4)=∫ Fg dx= FG- ∫fG=cosx・1/5 sin5x- ∫-sinx・1/5 sin5x dx =1/5 cosx・sin5x+1/5 ∫sin6x dx
=1/5 cosx・sin5x+1/5I(6)
まとめてみる。I(6)=I(4)-1/5 cosx・sin5x-1/5I(6) だから、 I(6)(1+1/5)=I(4)-1/5 cosx・sin5x
I(6)=1/6(5・I(4)- cosx・sin5x)
<一般化しよう>
・I(n)=∫sinnx dx = ∫sinn-2x sin2x dx= ∫sinn-2x(1- cos2x)dx= ∫sinn-2x dx - ∫cosx・ sinn-2xcosx dx
=I(n-2)- ICC(n-2)
置換積分しよう。sinx=tとおくと、dt/dx dx= cosx dx = dtだから、
IC(n-2)=∫ sinn-2xcosx dx= ∫tn-2 dt=1/(n-1) tn-1=1/(n-1) sinn-1x+C
部分積分しよう。(F,g)=(cosx, IC(n-2) )とおくと、(f,G)=(-sinx, 1/(n-1) sinn-1x)だから、
ICC(n-2)=∫ Fg dx= FG- ∫fG=cosx・1/(n-1) sinn-1x- ∫-sinx・1/(n-1) sinn-1x dx
=1/(n-1) cosx・sinn-1x+1/(n-1) ∫sinnx dx
=1/(n-1) cosx・sinn-1x+1/(n-1)I(n)
まとめてみる。I(n)=I(n-2)-1/(n-1) cosx・sinn-1x-1/(n-1)I(n) だから、
I(n)(1+1/(n-1))=I(n-2)-1/(n-1) cosx・sinn-1x
I(n)=1/n((n-1)・I(n-2)- cosx・sinn-1x)
結論
(例)
「cos4xの不定積分」は?
「cos3xの不定積分」は?
から
4.定積分と部分積分
部分積分公式∫fG=FG- ∫Fgを定積分に使うとき、
のように、積分記号のない関数積FGについても、定積分のように、FG(b)-FG(a)を求めよう。
FGの選び方の確認。
FGの役割は対等だ。積関数の片方を積分したら、他方は積分記号の中で微分しよう。
たとえば、
微分用はlogxで、logxがなければ代数式で。1も代数式。
(例)
f,G=(1, logx)⇒F,g=(x, 1/x)⇒Fg=1でカンタン。
f,G=(x, logx)⇒F,g=(1/2x2,1/x)⇒Fg=1/2xでカンタン。
f,G=(sinx, x)⇒F,g=(-cosx, 1)⇒Fg=-cosxでカンタン。
f,G=(sinx, 1)⇒F,g=(-cosx, 0)⇒Fg=0でカンタン。
(例)上記の3で、
∫ eax sinbx dx=eax(a sinbx- b cosbx)/(a2+b2)+C、
∫ e-x sinx dx=e-x(- sinx- cosx)/2+Cから、
(例)上記の4で、
・In=∫sinnx dx とすると、In=1/n((n-1)・In-2 - cosx・sinn-1x特にf(x)=cosx・sinn-1xとするとき、f(π/2)-f(0)=0-0=0だから、
Inの積分区間を[0,π/2]にすると、In=(n-1)/n ・In-2
(一般化しよう)
積分区間を[0,π/2]にすると、In=∫sinnx dxとするとき、l2=π/4、In=(n-1)/n ・In-2
から、I2=π/2・1/2、I4=π/2・1/2・3/4、I6=π/2・1/2・3/4・5/6、I8=π/2・1/2・3/4・5/6・7/8、....
だから、nが偶数ならば、∫sinnx dx=π/2・