10.導関数
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1.微分係数
このページは電子ブック「探求 数学Ⅲ」の一部です。
<微分係数の定義>
・微分係数はyの増分Δyをxの増分Δxで割った商、平均変化率のΔx→0のときの極限値。
Δx=b−aで定義した場合は、b→aにしたときの(f(b)-f(a))/(b-a)の極限値
Δx=hで定義した場合は、h→0にしたときの(f(a+h)-f(a))/hの極限値や
(f(a)-f(a-h))/hの極限値で定義できるね。
・この極限値が存在するときにx=aにおける微分係数といい、f'(a)とかく。
f(x)はx=aで微分可能だという。
f(x)がx=aで微分可能ならば、x=aで連続。
微分係数f’(a)はy=f(x)のx=aにおける接線の傾き[slope]でもある。
・f(x)が区間(a,b)の各点xで微分可能なとき、各点の微分係数f'(x)をxの関数とみることができる。
それをf(x)の導関数[derivative]という。
<導関数の定義>
微分係数のx=aの部分をxにしたものが導関数の平均変化率Δy/Δxの極限dy/dx。
dy/dx=limh→0(f(x+h)-f(x))/hやlimh→0(f(x)-f(x-h))/h。
導関数の定義は微分係数を求めることにつながり、極限値を求めることにも利用できる。
(例)
「f'(0)=1のとき、x→0のときの(f(sin3x)-f(0))/xの極限値」は?
(f(sin3x)-f(0))/x=(f(0+sin3x)-f(0))/sin3x・sin3x/3x・3→f'(0)・1・3=3
(例)
「x→1のとき、logx/(x-1)の極限値」は?
f(x)=logxとおくと、f'(x)=1/xだから、f’(1)=1
lim x→1logx/(x-1)=limx→1(logx-log1)/(x-1)=limx→1(f(x)-f(1))/(x-1)=f'(1)=1。
(例)
「 となる関数f(x)のx→0のときの微分係数」は?
微分係数を求めるには、分子部分(Δy)だけを求め、次にΔxあたるhやf(b)-f(a)で割れば良いね。
p(0)=q(0)=だから、 から、f(0)=1となる。
だから、f'(0)の分子部分にあたるf(x)-f(0)は、 と挟めるね。
次に、分母のΔx、つまりx-0で割った不等式を作る。
とおき、極限値をはさみうちの原理で決定しよう。
x>0のときは、 となる。右側極限値はx→+0のとき、r(0)=s(0)=2から、2。
x<0のときは、 となる。左側極限値はx→-0のとき、r(0)=s(0)=2から、2。
まとめると、極限値f'(0)は2。
接しているときは交点が1個
2.基本関数の導関数
くわしくはこちら数学Ⅱの微積分へ
<基本導関数>
・べき関数[Power Rule]
(c)'=0 、(x)'=1、(ax)'=a 、(xn)'=nxn-1
・三角関数[trigonometry]
(sinx)'=cosx、(cosx)'=-sinx、(tanx)′=1/cos2x (-1/tanx)'=1/sin2x
・指数・対数[exponetial/logarithmic]
(ex)′=ex、(lnx)′=1/x、(logax)′=1/(x lna)
<導関数の演算>
・和差と定数倍の微分(比例と同じで線形[linear]な性質があるね)
(f+g)'=f'+g'、(f-g)'=f'-g' 、(c・f(x))'=c・f'(x)
・積と商の微分
(fg)'=f'g+fg' 、(1/f)'=-f'/f2 、(f/g)'=(f'g-fg')/g2
・合成関数の微分[Chain Rule] 分数のかけ算のように連鎖的にかける。
、ds/dp=ds/dr・dr/dq・dq/dp
(例)
「y=(x+1)(x2+1)の微分」は?
(x+1)'(x2+1)+(x+1)(x2+1)'=(x2+1)+2x(x+1)=3x2+2x+1
(例)
「y=1/x2の微分」は?
パワールールを使うと、(x-2)'=-2x-3=-2/x3
逆数微分でやると、-2x/(x2)2=-2/x3
商の微分でやると、(0-2x)/(x2)2=-2/x3
(例)
「y=xlogx, y=x/(x2+1), y=e-xをxで微分」すると?
・y=xlogxはf=xとg=logxの積 だから、積の微分はf'g+fg'=1・logx+x・1/x=logx+1
・y=x/(x2+1)はf=x,とg=x2+1の商だから、
商の微分は(f'g-fg')/g2=(1・(x2+1)-x・(2x))/(x2+1)2=(-x2+1)/(x2+1)2
・y=e-xはt=-x。y=et。の合成だから微分連鎖はdy/dx=dy/dt・dt/dx=et・(-1)=-e-x
(例)
「y=sin3(2x+1)をxで微分」すると?
y=p3,p=sint, t=2x+1の3回の微分連鎖だね。
dy/dx=dy/dp・dp/dt・dt/dx=3p2・cost・2=3sin2(2x+1)・cos(2x+1)・2=6sin2(2x+1)cos(2x+1)
(例)
「y=x2/(2x+1)をxで微分」すると?
商の微分を使うと((x2)'(2x+1)-(x2)(2x+1)')/(2x+1)2
=(2x(2x+1)-2(x2))/(2x+1)2=2x(x+1)/(2x+1)2
<多項式の微分の利用>
「2次以上の多項式f(x)が(x-a)2で割り切れる」⇔「f(a)=f'(a)=0」
準備、F(x)=(x-a)2Q(x)とおくと、F'(x)=(x-a)(2Q(x)+(x-a)Q'(x))。だから、F(a)=F'(a)=0。
「⇒」f(x)が(x-a)2で割り切れるなら、f(x)=F(x)とおける。だから、f(a)=f'(a)=0。
「⇐」f(x)=F(x)+px+qとおくと、f(a)=F(a)+pa+q=pa+q=0と、f'(a)=F'(a)+p=p=0となる。
だから、p=q=0なので、f(x)=F(x)だから、f(x)は(x-a)2で割り切れる。
微分を使うと、2項係数の性質も導ける。
・nC1+2nC2+3nC3+.....+nnCn=n2n-1
2項定理から(1+x)n=nC01+nC1x+nC2x2+nC3x3.....+nCnxn
両辺微分してn(1+x)n-1=nC11+2nC2x+3nC3x2.....+nnCnxn-1
x=1を代入する。n2n-1=nC1+2nC2+3nC3.....+nnCn
微分形式を活用しよう
3.微分形式
<微分形式dy、dxの利用>
・陰関数の微分
y=の形ではなく、等式の左辺にxとyがまざっている陰関数形式の微分の注意点。
変数yを定数ではなく関数として扱うことになり、合成関数・積・商などの扱いになる。
(例)
「x2+xy+y2=k(定数)をxで微分」すると?
(x2)’=2xのように、yが入らないと通常通り。
(y2)は合成関数扱いになる。d(y2)/dy・dy/dx=2y・y'
(xy)'は積の微分扱いになる。(xy)'=x'y+xy'=y+xy'
これから、 2x+y+xy'+2y・y'= 0 となるから、(2x+y)=-(x+2y)y'となり、y'=-(2x+y)/(x+2y)。
・パラメータ表示の微分
dy/dx=(dy/dt)/(dx/dt)のようにパラメータで微分したものの商で求める。
(例)
「曲線x=cos5θ,y=sin5θの導関数」は?
導関数はdy/dx=(dy/dθ)/(dy/dθ)=(5sin4θ・cosθ)/(5cos4θ・(-sinθ))=-tan3θ。
(例)
「パラメータθで、(x,y)=(1-cosθ, θ-cosθ)とするときのxによる微分y', y"」は?
(=f/g)とおくと、
=
・逆関数の微分
dy/dx=1/(dx/dy)のように逆関数を戻して変数yで微分したものの逆数で求める。
y=x2の逆関数x=y2をxで微分すると、dx/dy=d(y2)dy=2y=2√xだから、dy/dx=
(例)
「x=siny 、x=cosyをxで微分」すると?
dx/dy=d(siny)/dy=cosy=√(1-sin2y)=√(1-x2) 。だから、(sin-1x)'=
dx/dy=d(cosy)/dy=-siny=-√(1-cos2y)=-√(1-x2)。だから、(cos-1x)'=
<対数微分法>
logxをxで微分すると、1/xだが、logyをxで微分すると微分連鎖で1/y・y'となる。
だからy=f(x)の対数をとってxで微分すると、y'を求められる。両辺が正であれば対数が取れる。
log y=logf(x)。両辺微分して、y'/y= f'(x)/f(x)。だから、y'=y/f(x)・f'(x)となる。
y=log|sinx|をxで微分するとy'=(sinx)'/sinx=cosx/sinx=1/tanx
y=1/2log|(x-1)/(x+1)|をxで微分するとy'=1/2(log(x-1)-log(x+1))'=1/2(1/(x-1)-1/(x+1)=1/(x2-1)
(例)
「x>0のとき、y=xxをxで微分」すると?
両辺の対数logy=x・logx。両辺をxで微分すると、y'/y=(x )'logx+x(logx)'=logx+1。
y'について解くと、y'=y・(logx+1)
(例)
「x>0のとき、y=xα(αは実数)をxで微分」すると?
両辺の対数logy=α・logx。両辺をxで微分すると、y'/y=α/x。
y'について解くと、y'=y・α/x=xα・α/x=αxα-1。
(例)
「y=をxで微分」すると?
べき関数、積、商、合成関数の微分法のすべてを使えば求められるが、対数微分法を使ってみよう。
両辺の対数はlogy=1/2{log|1-x|+log|2x2+5|-3log|x-2|}となり、xで微分すると、
y'/y=1/2{-1/(1-x)+4x/(2x2+5)-3/(x-2)}となるね。
これをy'について解くと、y'=y/2{-1/(1-x)+4x/(2x2+5)-3/(x-2)}
=1/2・√((1-x )(2x2+5)/(x-2)3){-1/(1-x)+4x/(2x2+5)-3/(x-2)}
<高次導関数>
導関数をくり返し求めたものを高次導関数とか、高階導関数[higher derivative]という。
f(x)をn回微分したn次導関数はf(n)(x)とかいたりする。
たとえば、関数Aを1回微分して導関数Bが求められることを、A→Bと表すことにしよう。
すると、xn→nxn-1→n(n-1)xn-2→n(n-1)(n-2)xn-3→n(n-1)(n-3)xn-4
となるから、(xn)(k)=nPkxn-k
(xn)(n)=nPnxn-n=n!
(例)
「sin(n)(x)=sin(x+nπ/2)」になる理由は?
sinx→ cosx=sin(x+π/2) →-sinx=sin(x+π) →-cosx=sin(x+3π/2) →sinx=sin(x+2π)
つまり、1回微分でsinの角がπ/2ずつ増えることになり、4回で戻っているから。
★2回微分で、逆符号になるというのも面白いね。